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学校にて
駅から10分弱。辰伶にとっては卒業して以来の、嘗て通い慣れた道筋である。まだ感傷的になる程時が経った訳でもないのに、少しだけよそよそしさを纏って歩く。
何も変わっていない。まだ何かが変わる程、時代は過ぎていない。電車の時間合わせに立ち寄った書店。迷惑を省みずに、友人達と長時間話し込んでいたファーストフードの店。すべて変わらずにそこにある。老人のごとく懐古に耽るのは、もっとずっと先でいい。
もともと長くも無い距離を少々早足気味で歩いたので、辰伶は程なくして母校の校門を前にする事となった。しかしそこにはほたるの姿は無い。
「ここでは無かったか…」
空が冬の咆哮を上げている。寒風が沁みて、辰伶はコートの前を合わせた。電車の中は人ごみで暑いほどだったし、歩いているときもそれ程寒さを感じていなかったので開けていたのだが、俄かに真冬の風を実感させられた。
さて、これからどうするか。校門に背を向けたところへ、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「辰伶先輩」
背後からの呼びかけに、辰伶は振り返った。
「おまえは…」
辰伶に声を掛けたのは…
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