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紅虎に遇う
辰伶に声を掛けたのは、紅虎という漢だった。
「お前は確か、ほたるの友人だったな」
「この前はお邪魔さんでした」
以前、ほたるが友人達数名を家に連れてきたことがある。ほとんどがほたるの同級生で、その時のメンバーの中にこの紅虎もいた。
紅虎というのは実は通称で、本名は徳川秀忠という。頭に捲いた紅い虎柄のバンダナと線目がトレードマークだ。何故か関西弁を喋る。
辰伶はほたるが連れて来る以前に、まだ高校に在学してた頃から紅虎のことは知っていた。1学年下のこの漢は、一見して軽薄そうな高校生にしか見えないが、実は某有名政治家の息子である。ただし、父親との仲はすこぶる悪く、当人は同じ道に進む気はないらしい。
「今日は懐かしの母校に、何ぞ用でもありますの?」
「いや、用事というか…」
辺りには紅虎の他には誰もいない。ほたるの指定したのはここではなかったようだ。
「なんや知らんけど、ほたるはんによろしくな。ほな、わい用事が…あ、ゆやはーん」
挨拶もそこそこに紅虎は駆け去ってしまった。彼の行く手には1人の女子高生がいる。彼女にも見覚えがある。確かほたるの同級生だったはずだ。
「さて、どうしたものかな」
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